モクズガニ、固有種か
小笠原・父島のモクズガニ、固有種の可能性も
水産センター調査で判明
◇九州生息種と生態など違い
小笠原諸島・父島のモクズガニが、小笠原の固有種の
可能性があることが、都小笠原水産センター(小笠原村父島)の
調査で明らかになった。
同諸島は、過去に大陸とつながったことがなく、
陸上の動植物などに多くの固有種があるが、
川に生息する生物の多くは、本州・沖縄の共通種とされてきた。
同センターは、同諸島の世界自然遺産登録にも貴重な資源に
なると期待を寄せている。
モクズガニは、日本海域にも広く分布するイワガニ科の一種。
同センターが02年度から父島中部の八瀬川で調査を行ってきた。
その結果、
(1)九州地方のものが3~8センチなのに、
6~10センチまで大きく成長する
(2)繁殖期が九州地方のものが10カ月近くあるのに、
半分の5カ月ほどしかない
(3)大型のオスでは、ハサミの周りを毛が一周せず、
下面でつながっていない
――などが分かった。
また、東京海洋大学(港区)の研究で、小笠原のものと
本州のものでは遺伝子的にも大きな違いがあることが
分かっているという。
◇「これから成長過程など十分調査」
同諸島では、ムニンヒメツバキ、オガサワラモリオオコウモリなど、
固有種が動植物で多く、「東洋のガラパゴス」と呼ばれている。
しかし、モクズガニは、ウナギ、サケなどと同じように、
成長の過程で淡水域と海水域を行き来する
「通し回遊」を行っているため、注目されていなかった。
同センターの山本貴道研究員は「これから成長過程など生態を
十分調査することで、固有種かどうか分かっていくだろう」
と話している。
【大坪信剛】(毎日新聞)