TSL燃料高騰で就航断念
小笠原航路の世界最高速客船、燃料高騰で就航断念
国策として約115億円を投じて開発・建造された世界最高速の
大型客船「テクノスーパーライナー(TSL)」について、
国土交通省と東京都は、今年11月に予定していた
小笠原航路(東京~父島)への就航を断念する方針を固めた。
海運会社が原油の高騰で採算の見通しが立たないとして
同船の運航に二の足を踏む中、同省と都は赤字が前提の
公費助成は不可能と判断した。“夢の高速船”は実動も見ずに
廃船となり、財政投融資資金などで賄われた巨額の建造費が
無駄になる可能性が強い。
TSLは船体をホーバークラフトのように空気圧で浮かし、
大型船では世界最高速の時速約70キロを実現。
今年11月、片道約1000キロの小笠原航路に就航する
予定だった。しかし今年6月、船を所有する政府系企業と
リース契約を結んでいた「小笠原海運」が、昨夏以降の
原油高に伴う燃料費の高騰から、年約20億円の赤字が
見込まれるとして、契約破棄を通告した。
このため、国交省造船課と都は、計50億円でTSLを
買い取り、小笠原海運へのリース料を
年約8億5000万円から2億円前後に引き下げることを計画。
それでも見込まれる年10億円程度の赤字は、
新規の補助金を設けて補てんする見直し案を検討した。
だが、財務省が「助成額が大き過ぎるうえ、抜本的な解決に
なっていない」としたほか、国交省内にも反対意見が強く、
造船課は今月中旬、来年度予算の概算要求に見直し案を
盛り込まない方針を都に伝えた。
小笠原海運や同社の親会社の日本郵船は
「助成が受けられなければ、裁判になっても契約はしない」
としており、同社側による運航中止は決定的となった。
(2005年7月25日3時4分 読売新聞)