小笠原の「野ネコ」東京生活

2007 年 2 月 16 日 in blogs, ニュース

小笠原の「野ネコ」マイケル東京生活 希少鳥類守るため

世界自然遺産の候補地・小笠原諸島(東京都小笠原村)で、
希少鳥類を襲う野ネコを捕獲し、1000キロ離れた東京で
飼いネコにする活動が行われている。海を越えて運ばれた
ネコは現在20匹。殺処分してしまうのではなく獣医師の手で
飼いネコに「更生」させることで、「ネコの飼い方の意識改革を」と、
ヒトへのメッセージを送る試みだ。

名前はマイケル。母島からやってきた虎毛の雄ネコが、
東京都稲城市の新ゆりがおか動物病院にいる。飼い主の
小松泰史院長にのどをなでられると、気持ちよさそうに目を細める。

マイケルは一昨年5月、海鳥の繁殖地として知られる
母島の南崎で、大型海鳥のカツオドリを捕らえて食う姿を
自動撮影装置に撮られた。

父島と母島にいる野ネコは数百匹と推測されている。
島の年間平均気温は23.4度。一年を通じてネコが発情する。
住まいの窓は開け放しで、室内飼いは定着しない。
毎年300人前後が入れ替わる本土からの転勤者の中には、
島を離れる際にネコを捨てる人もいる。

そうやって増え野生化したネコが、貴重な固有種である
ハハジマメグロやアカガシラカラスバトを食べているのでは
ないかと指摘されていた。

自動撮影装置の写真は決定的な証拠となった。間もなく、
環境省や林野庁、東京都などが緊急捕獲に乗り出した。

問題は捕まえたネコをどう扱うかだった。

世界遺産登録を目指す小笠原では、外来種のトカゲや
野ヤギなどの捕獲・処分が行われている。

しかし、身近なネコの処分には島民の反発もある。
処分しても、島に人が暮らす限り必ずだれかがネコを
持ち込むし、捨てる人も出る。

「飼い方そのものを変えなければいけない、という
結論になった」と、自動撮影装置を設置した地元のNPO
「小笠原自然文化研究所」の鈴木創事務局長(41)は話す。

相談を受けた都獣医師会が、会員から有志を募って
動物病院で野ネコを引き取ることにした。同会にも、
野生生物の保護と同時に、ネコの正しい飼い方を広めたい
という狙いがあった。

野ネコを捕獲して飼いネコにする活動は、ヤンバルクイナ
保護を目的とした沖縄県での例があるが、小屋を作り
一カ所に収容する方式で、費用がかさんだ。小笠原の場合、
同会所属の都内約740の動物病院を受け入れ先にすることで、
負担が分散できる。

小笠原村は99年、全国初の「飼いネコ適正飼養条例」を施行、
飼い主にネコの登録を義務づけた。野ネコへの不妊手術も
約390匹実施したが、野ネコはなかなか減らなかった。

捕獲直後は暴れる野ネコも、人間や受診する動物たちと一緒に
過ごすと、数カ月で人に慣れる。「かわいくて手放さない
動物病院も多い」(新ゆりがおか動物病院の小松さん)という。

昨年夏、島を訪れた獣医師たちは島民と連続懇談会を開き、
東京でのマイケルたちの暮らしぶりを紹介した。
「野生化して鳥を襲ったのは無責任な飼い方のせい。ネコに
罪はない」。島の人たちの間にも、そんな認識が生まれつつある
という。

都獣医師会は、野ネコへのエサやり禁止や室内飼育、
不妊手術の奨励を提案。地元ではこれらを盛り込んだ
新たな条例制定を模索している。鈴木さんは
「希少な動植物のすぐ近くで人間が暮らすのが小笠原。
ネコが野生動物と出合わぬよう、人間が責任を持って飼うという
考え方を島に定着させたい」と話している。

2007年02月16日16時47分 朝日新聞

関連リンク:
小笠原諸島:世界遺産
小笠原諸島の野猫問題

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