TSL赤字20億円支援催促

2005 年 6 月 5 日 カテゴリー: blogsニュース

国策最速船、早くも支援催促…年20億円の赤字予測で

国家プロジェクトとして開発され、今年11月、小笠原航路に就航する
世界最高速の大型旅客船「テクノスーパーライナー(TSL)」について、
海運会社が年約20億円の赤字が出ると試算し、国や都に早くも
経営支援を求めていることが4日、わかった。

TSLは一般船舶の約5倍の燃料代を費やすため、
最近の原油高騰の波をもろにかぶる恐れが強まっているためだ。

国、都とも補助金制度の財源は乏しく、前例のない「高額赤字補てん」
ともなるため、対応に苦慮している。

TSLは、ホーバークラフトのように船体を空気圧で浮上させるという、
大型船では世界初の推進構造を持つ。
最高速度約40ノット(時速約70キロ)で、一般旅客船の約2倍。
同じ大きさの最高速フェリー(約30ノット)を大きくしのぐ。

第1号船は岡山県内のドックで今夏、完成を迎える。
試験航海を経て「小笠原海運」(東海汽船、日本郵船の連結子会社)に
引き渡され、今年11月、小笠原航路(東京―父島)に就航する予定。
現在の片道約26時間はTSL導入後、17時間に短縮される。

国土交通省が同航路を新型船の“初任地”に選んだのは、
年約4万人が利用する「黒字路線」であることに加え、
島の空港建設中止を唱えた「石原都政」が強力に誘致を推進したため。
小笠原海運はこうした流れの中、2003年1月、政府系企業と
18年のリース契約を結び、毎年8億円を支払うことで合意した。

ところが、昨年夏以降の原油高騰で、運航コストに重大な懸念が出てきた。
一般の船が重油を燃料とするのに対し、TSLはそれより高い軽油を
使うため、このまま値段が下がらなければ、採算を大きく割り込むことは
必至の情勢だ。

同社が今春の市場価格で試算したところ、燃料費は
1往復約2000万円と判明。当初見込みの2倍に上り、
満員でも採算が取れないという。

さらに、契約当初、就航と同時に現在稼働中の「おがさわら丸」を
売却する方針だったが、未知のハイテク船への全面転換は
リスクが高いと判断、1年間は代用船として保有することを決めた。
この維持費も数億円に上り、同社は出航約70回、旅客約5万人を
見込んで収支を試算したところ、年約20億円の赤字は
避けられないとの経営見通しを出した。

個室使用料などの値上げも検討しているが、
島唯一の生活路線のため、基本運賃(往復約4万5000円)の
大きな値上げは難しいと見られる。

離島航路には国交省と自治体が共同で、赤字を埋める
補助金制度がある。事前の届け出が必要で、同社は5月末、
同省と都に収支見通しを提出した。

しかし、国の予算は年38億円、都は9億円ほど。
いずれも全額を他の赤字航路に費やしており、TSL次第で
大幅な負担を迫られかねない。
国交省は「20億円とは……」と困惑。
都も「支援はしたいが、補てん額が多すぎる」としている。

国交省は、TSL就航で小笠原観光が“ブレイク”することを当て込み、
「旅客10万人が利用」との需要予測も出していた。
小笠原海運の関係者は、「補助金に頼るのはしのびないが、
とても一企業が背負える損金ではない」と話している。

(2005年6月5日3時5分 読売新聞

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