小笠原諸島「世界遺産」の前途多難/賛否が分かれる空港建設

2011 年 8 月 6 日 カテゴリー: ニュース

小笠原諸島が2011年6月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会で世界自然遺産に登録以降も様々な問題が残されています。


2011/8/ 6 10:30 J-CASTニュース

カタツムリマニアにはたまらない

小笠原諸島は南北約400キロに及ぶ大小30の島々で構成される。登録地は、父島、母島の居住地域や自衛隊基地がある硫黄島などを除き、陸域、海域を合わせて7940ヘクタール。

大陸と地続きになったことのない「海洋島」で、ダーウィンの進化論の舞台となったガラパゴス諸島(エクアドル)と共通することから、動植物が独自の進化を遂げ、「進化の実験場」「東洋のガラパゴス」と呼ばれる。小笠原でしか見られない固有種は、植物441種中161種(36%)、昆虫1380 種中379種(27%)にのぼる。なかでもユネスコが、貴重さを示す具体例として高く評価したのがカタツムリの仲間、陸産貝類で、106種のうち100種(94%)が固有種で、面積が約100倍のガラパゴスより種数が多く、絶滅率は22%と低い。

(中略)

例えば北米原産のトカゲ「グリーンアノール」は父島と母島で数百万匹が生息していると推測され、オガサワライトトンボやオガサワラシジミといった固有の希少昆虫を食い荒らす。環境省などは2006年から粘着シートやネットを使ったわなでの捕獲に取り組む。家畜やペットとして持ち込まれ、野生化したヤギやネコなどによる食害も深刻だ。

生態系に組み込まれた外来種はやみくもに駆除すれば済むという単純な話ではない。弟島ではカタツムリを食べる野生化したブタの駆除を進めたところ、ブタが好む外来種のウシガエルが増えて固有種のトンボの絶滅懸念が浮上した。

こうした問題も考慮しながら、外来種対策が練られているが、その大きな柱が外来種持ち込みを水際で防ぐための検疫。島に入ると、所々に柵や、「靴底のドロ落とし」を呼びかける看板などが設けられている。父島の絶滅危惧種「アカガシラカラスバト」保護地域では、2003年から観察用の指定ルートが整備され、保護とエコツアーの両立の取り組みが進むが、入り口では粘着テープつきのローラーで服についた外部の草木の種を取ることを義務付けている。

島民の賛否が分かれる空港建設

多くの島民は、世界遺産指定の取り組みを通じ、こうした保護の取り組みを当然と受け止めているが、一方で、唯一の産業ともいえる観光への期待は大きい。そこでポイントになるのが空港建設問題だ。

(中略)

島民の間で賛否は割れている。自然に惹かれて移住した「新住民」を中心に「自然破壊が進む」との懸念の声が聞かれる一方、観光関連、サービス業など商工関係者を中心に空港建設待望論が多い。また、島生まれの人など、医療への不安を抱える高齢者を中心に、空港に期待する住民も少なくない。

石原慎太郎東京都知事は、「素晴らしい自然を見に行くなら飛行機で行って見てすぐ帰ってくることもない」と述べ、建設に消極的な姿勢を示す。


※長い間空港建設が取り沙汰されていますが、島民に対するアンケートの実施やその意識の変化が気になります。


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